2018年02月01日

S500X1

 M140に続いて再びBrotherの機械が入りました。今度はS500X1

 今までタッピングセンターでは工具長測定にBIGのベースマスターを使っていましたが、M140では工具折損検出装置を利用して測るようにしました。小型の5軸機はワークを取り外さないとテーブルにベースマスターを置くような空いたスペースが無いので。

 これが中々好評なのでS500X1にもオプションを付けておいたのですが、ちょっとこちらの方はそのままでは工具折損検出の役割にしか使え無さそうな状態。

 具体的に言うとセンサーを取り付けているステーが板金で華奢なのと精度が出ていないので、測定子の水平が出ていないのです。それもわずかφ3の範囲でコンマ台の傾き。そりゃ〜ないでしょう。

 もちろんこんな状態でも工具折損検出くらいには使えると思います。オプションの名目も『工具折損検出装置』ですから、クレーム付けた所で相手してくれないでしょう。

 という訳でそのままではこちらの目的としている工具長測定装置として使えませんが、かと言って折損検知だけで我慢する事も出来ないので、何とかして目的が果たせるように改善を図る事にしました。

 まず板金をテーブルのT溝にM10のキャップ1本で止めていますが、板金が薄すぎて曲がってしまっています。そのせいでセンサー付近をちょっと揺するとふにゃふにゃ。

 これをどうにかする為に、M10の狭い範囲で締め付けるのが問題と見て、ブロックを噛まして出来るだけ広い面で押さえつけるようにしました。これだけでもかなり剛性はUPします。

S500X1_Tool_Breakage_Detection_Sensor.jpg
工具折損検出装置

 続いて測定子の水平ですが、板金の精度が悪すぎてシムを噛まして何とか出来る様な気がしなかったので、仕方がなくプライヤーで曲げ曲げしながら根気よく水平が出るまで調整しました。柔な作りだと却ってこういう操作は楽ですね。いつまで精度維持出来るか分かりませんが。

 やれるだけ調整してみて、それでもダメだったらステーを削り出しで作り直そうかと思っていましたが、まぁ何とか使えそうな状態にはなったので、暫くこれで運用してもらってそれでもやっぱりダメだなぁとなったら改めて考える事にしました。


 因みに本来このセンサーはテーブルの左奥に設置されていますが、バイスを2連にしているとバイスの固定側口金のすぐ左隣にセンサーが来るので、フェースミルでセンサーを削ってしまわないか心配になります。

 幸いうちでは小物が主体なので、テーブルの前の方に移設した方が普段の加工の邪魔にならなさそうだったので設置場所も移してみました。こういう融通が効く所はDIYの利点かも。

タグ:工作機械

posted by antec at 20:54 | Comment(0) | 工作機械 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月12日

DLC転造タップ

 アルミに転造タップでトラブると言うとだいたいが溶着からくる物ではないでしょうか。ダイカストみたいなSi多めな材料では転造タップはとても有効でトラブルも少ないと思いますが、アルミニウム合金としては最も一般的なA5052などでの転造タップは注意が必要です。

 溶着を防ぐ手段の1つとして被削材との親和性の低いコーティングが挙げられ、アルミ加工で実績の高いコーティングとして真っ先に上がるのがDLCコーティングではないでしょうか。

 所がタップメーカー各社へタップへのDLCコーティングの適用を聞いてみると、どこもあまり良い話をしてくれません。

 曰く、DLCコーティングはそもそも密着性があまり良くなく、特に超硬に比べて軟らかいハイスへのDLCコーティングでは、剥離のトラブルが避けがたい為なんだそうです。で、色々と研究した結果として世の中に出してるのが今の製品ラインナップなんだとか。

 え〜、そんな事言ったってさぁ、アメリカじゃ違う事言って売ってるじゃん(注:リンク先PDF)とか個人的には思うわけです。

 またDLC以外にもアルミの溶着が少ないコーティングとしてはCrN、CrC/C、ZrN、TiB2など、色々と切削工具や金型などで効果を上げている物はありますが、そういった物は駄目なんでしょうか?

 そんな訳で待ってても一向にこれという製品が出てきそうもないので、もう既に出しているメーカーを探して取り寄せてみました。2つほど。

 1つは泣く子も黙る高額工具メーカーで有名な(と勝手に思っている)EMUGEのイノフォーム 1-AL/E-SN-PM-GLT-8(注:リンク先PDF) という、DLCコーテッドフォーミングタップ。型式覚えられません。

 もう1つは世界初の超硬スローアウェイ工具の特許取得など、超硬工具のパイオニア的企業であるとされるWIDIA(の傘下に入っている)GTDという、タップメーカーとして140年以上もの歴史があるそれはそれはありがたいブランドのタップ、GT22 • Metric DIN 2174 • Form C Semi-Bottoming Entry Taper です。

 とりあえずテストとして200穴ほど加工してみた限りでは、国産のTiCNコーテッドタップに比べるとねじ山がとても綺麗です。これがどれくらい続くのかは分かりませんが。

 一方ちょっと困るのが基本的な寸法諸元が DIN 2174 に基づいて作られている所。分かり易く言えば国産タップ(JIS規格)とシャンク径が違う。その為に近年お流行りのメガシンクロタッピングホルダなどが使えません。まぁコレットで咥えれば良いので大した問題ではないか。

 あと言うまでも無くやたら高い

 実戦配備して数万穴くらいやって良い結果が出たら、もう1度国内タップメーカーさんに言ってやろうと思う。タップにDLCだって上手くやれば使い物になるじゃん、と。いやまだそれは分かりませんが。

 もしやっぱダメだねーという結果だったら、確かに仰る通りでした m(_ _)m と謝罪致しますので代わりにもっと良いの作って下さい。

 こんな高級工具そう気易く買える物ではありませんが、アルミだったらむしろTiNとか、あるいは超硬ロールタップなんかも中々良い具合だよというまことしやかな情報もあります。でも何かそれじゃ面白く無いんだよね〜。

追記 2018.01.15

 ちなみに世界最大の工具メーカーであるサンドビックさんを探してみると、DLCの転造タップ(M3〜M8)CrNの転造タップ(M3〜M12)もちゃんとラインナップしている模様。もう少しサイズ増やして欲しいけど。あと残念ながらこちらもやっぱりDIN規格。

 また見積貰ってあんまり高く無かったら使ってみたいなぁ。

タグ:ねじ 工具

posted by antec at 21:20 | Comment(2) | 工具 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月02日

球型ボールエンドミルによる裏面取りの汎用的な方法

 以前に裏面取り用の工具をまとめた事がありますが、まだまだ裏面取り加工のプログラムは一般的でないのか、CAM によって対応状況に差があるように感じます。

 Mastercam なんかは比較的ツールパスが豊富なので、ライセンスさえあればワークに合わせて色んな方法でパスが作れるので何とかなる事は多いですが、それでも裏面取りの為の専用ツールパスがあるわけではありません。また HSMWorks の様な非力な CAM では裏面取りの様なアンダーカットの加工が苦手な感じ。

 特に曲面形状の裏面取りは CAM がきちんと対応していないと結構面倒です。

 そこでそういう裏面取りに対応していない3次元CAMでも出来そうな、球型のボールエンドミルを使った汎用的な方法を1つ紹介したいと思います。

手順

 まずは簡単なパイプの横穴の様なケース。

 とりあえず加工したいモデルの面取りを適当に作図します。

BackChamfer-01.png
図1 円筒横穴の裏面取り

 次に面取りフェースからオフセットサーフェスを作ります。オフセット量は加工に使う球型ボールの半径分になります。このサーフェスが球型ボールエンドミルの中心が通る所になります。

BackChamfer-02.png
図2 オフセットサーフェス

 オフセットサーフェス上にツールパスラインを作図するにはアイソパラメトリック曲線(UVカーブ)が利用出来ます。因みにSolidworksではスケッチツールの『面カーブ』コマンドを使います。

BackChamfer-03.png
図3 オフセットサーフェスのアイソパラメトリック曲線を抽出

糸面取りであればツールパスラインは中央に1本あれば良いですが、必要に応じて複数描いてもOKです。

 あとはこのカーブ上を工具が通る様に『3D輪郭』とか『トレース』とかのツールパスを作成しますと、こんな感じになります。

BackChamfer-anime.gif
図4 面取り加工の動き

 球型ボールエンドを使う利点としては、工具の向きが自由になる所が挙げられます。何らかの事情があって横穴の方から工具を突っ込む事が出来ない場合には別の方向から加工する事になりますが、工具の向きが変わっても球型ボールの中心が辿る経路は変わらないので作図は共通で行けます。

BackChamfer-front-anime.gif
図5 別の方向から
BackChamfer-L1.png
図6 形状が変わっても
BackChamfer-L2.png
図7 同じくオフセットして
BackChamfer-L4.png
図8 UV曲線抽出して必要に応じてアプローチを追加し
BackChamfer-Lanime.gif
図9 加工の動き

 如何でしょうか。工具は基本的に球型ボールエンドミル(場合によっては普通のボールエンドミルも)しか使えませんが、加工形状の制限は少なく、作図も比較的簡単な方だと思いますので、投影加工ではなく深さも3D曲線に沿って加工するツールパスがあれば大体どんなCAMでも作れそうな方法だと思います。因みに上のアニメーションGIFのツールパスは HSMXpress( HSMWorks の無料版で2.5Dまでの加工に対応)で作成しました。面沿いなどの3Dのツールパスが無くても可能という事です。

 今回は特に裏面取りの事例を取り上げましたが、この方法は別に裏面取りに限らず面沿い加工全般に適用可能です。例えば Fusion 360 の CAM は HSMWorks とほぼ同じものですが、HSMWorks にはある『面沿い』がありません。まぁもともと HSMWorks の面沿いはあまり出来が良くないので、そこらの問題があって移植されなかったのだと思いますが、面沿いが無いと何かと不便です。そういう時にもこの方法が利用出来ると思いますので、DIY界隈の方や CAM の吐き出すパスの品質に満足出来ない方は試して見て下さい。

タグ:バリ CAM

posted by antec at 15:07 | Comment(2) | CAD/CAM | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする