2016年03月26日

R精度

 2012年に書いたこんな形状の部品。こういう図面が来た時、普通ならまず図面指示がおかしくないか確認する所ですが、レンズ屋さんからの依頼品なので本当にこういう曲率精度が必要らしく大変。詳しいことは知りませんが所謂シリンドリカルレンズを磨くための治具の様です。

 今回の物はR330±0.03、サイズは35×130×520(厳密にはちょっと違いますが)と全長はこれまでで最大。V33のX軸ストロークは600なのでそろそろヤバイ感じ。

 大きさも然ることながら、R330で幅130ってのはなかなかしんどいです。円弧の角度範囲は約22度しかありません。

 この範囲でR精度を公差内に入れようと思うと、頂点を基準にして両端で約±0.55μmという計算になりますが...そんな精度に入る物なのかな?

 とりあえずZ0.1上げて1発目...+0.05〜+0.08。

 モデルのRを-0.05して2回目...-0.13〜-0.18...あれ?

 Rを再び基準値に戻し、条件の方を見直して3回目...+0.07〜+0.09...行ったり来たり。

 Rを基準値-0.015にして4回目...-0.0009〜+0.0234...Σ(゚Д゚;入った

 CMMによる測定なので本当に出ているのか信じがたい所がありますが、こういう時だけは素直に測定値を信じましょう(ી(΄◞ิ౪◟ิ‵)ʃ)

 形状精度を見てみると円筒度が4.3μmでした。長手方向に反りが2μm程あり、各断面の真円度は2μmくらい。これをグラフにしてみると工具に付いていたR精度検査表の形状とほぼ同じ傾向でしたので、やはり工具のR精度が転写されていると見て良さそうです。

 因みに使用した工具はユニオンツールSuper EXCELLENT BALL。R精度±0.002〜0.003の高精度ボールエンドミルは国内大手各社から出ていますが、ユニオンのが他社と違うのはRの基準値。

特徴

超高精度タイプのロングネックボールエンドミル。

R公差φD/2±0.003(φDは先端から1.25×呼びRの位置の突出刃の回転径)

1本ずつにR精度検査表を添付。

外径公差:0/-0.01

超硬エンドミル総合カタログ vol.16 F-39 より

 つまり呼び径ではなく実工具径が基準なのです。

 まぁ個人的な好みの問題ですが、何となく実工具径とRが同じ方が気持ち良いからという、ただそれだけの理由なんですが。実際に使うのは工具の先端の方だけなのでほぼ意味は有りません。

 これ以上の形状精度は工具のR精度を転写しないようにする必要がありそうですが、立MCではちょっと工夫が必要ですね。5軸なら原理的には切刃上の1点のみを使用する事も可能ですが、機械精度がそこまでついてきてくれるのかちょっと心配になってきます。

 ただし5軸でやると仕上げ加工時間が大幅に短縮出来るのでそこは魅力的。うちの様な温度管理がきちんと出来ていない工場では尚更。


 今回仕上げ加工を3回する計算で見積出してたのでちょっと合わない気がするけどまぁ良いや。今朝からちょっと熱っぽいので、明日はゆっくり休もう。


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2015年07月20日

石定盤

 現場用に1つ小型の石定盤が置いてあります。自分は普段あまり使う事が無いのですが、前々から汚れが気になってたのでちょっと手入れしようかなと思い立ちました。休日出勤で暇だったので。

DirtyGraniteSurfacePlate.jpg

 こりゃかなり重症ですね(汁

 普段は軽くアルコール(IPA)で拭きとってお終いなんですが、ここまで汚れてるとそういう訳にも行きません。なのでこいつ↓を使いました。

GraniteSurfacePlate-Cleaner.jpg
JFA CLEAN

 石定盤専用のクリーナーです。こいつを適当に掛けてウェスで拭き取ると結構簡単に綺麗になります。きちんと乾くまで拭き取らなくても放っておけば自然乾燥するので後始末も楽ちんです。

 まぁこんなの使わなくても普通の中性洗剤で十分ですよとメーカーの方は仰っていましたけど、石定盤も安いものじゃないのでちゃんとした物使った方が安心ですね。

 尤も何を使うかよりも日々の手入れをちゃんとする方が先決ですが!


 割りと大事な事ですし案外知らない人が時々居るので一応書いておきますが、鋳物の擦り合わせ定盤などと違って石定盤は油厳禁です。表面に油分がつくと滑りが悪くなって使いづらいのと、埃がくっついて摩耗の原因になるからです。あと膨潤して精度が狂います。

 一方擦り合わせ定盤(鋳物)は油膜で滑らすのと錆止めを兼ねてこまめに油をさしてあげないと行けません。

 その他にも色々と石定盤は鋳物定盤と扱い方が異なるので気をつけましょうね。


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2012年12月22日

データムはどれ

 図面の書き方というのは必ずしも最新のJISに従わなければならないわけではないけど、それでも何故JISが度々改正されているのかその背景を考えると、やはりそれなりに従う必要性もあるのではないだろうか。

 まぁ僕も大して理解してないですけどね。

 それでもやっぱり、幾ら何でもこういうのはそろそろやめてもらいたい。

IncorrectDatum.png
<図1> 中心線にデータム記号

 まぁ気持ちは何となく分からなくもない。だけどこれでは、このデータムがどの中心の事なのか定かでない。

 実際の使用方法から考えれば、本来データムにすべきはφ20H7であるはず。だがこの図ではφ20H7にデータムAに対して全振れ0.01の指示があるので、このデータムAはφ20H7の中心ではない可能性が高い。

 もしこれがφ20H7の中心の事を指しているならば、その場合には全振れではなく円筒度で指示すべきだろう(*1)。その方が意味が伝わりやすい。

 ではφ88の中心なのか...

 自社の図面ではないのでこれ以上は載せられないけど、同じ中心を採る形状が他にも沢山あって、この図面を書いた人がいったいどれの中心のつもりで指示したのか明確に読み取る事は出来ない。

 そういう曖昧さを残しておくと加工するのにも検査するのにも困るから、随分前のJIS改正でデータム記号を(テーパを除く)中心線に指示する事が許されなくなったのではないのか。


 昔からそうやって書いて来た設計者が未だにそのままのやり方でやってるのは半ば諦めもつくのだが、その下の若い設計者までこういう悪習に染めるのだけは可哀相なので勘弁してあげて欲しい。


注記

*1 尤もこの様な厚みの無いものだと円筒度で評価する価値はあまりないので真円度で十分だとは思うけど。

タグ:測定 CAD 図面

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2012年09月12日

宿敵

Semicylindrical_dwg1.png
<図1> かまぼこ形状の図面

 こういう図面がちょくちょく来る。その度にいつも電話して、図面の真意を伺うことになる。それはなぜか。

 こういったものを加工した事のある人はわかってると思うけど、図面を真面目に捉えるとこのR100±0.5という寸法はかなり厳しい精度を要求されている。最近のNC機なら円弧補間の運動精度は千分台とか平気だから、±0.5なんて他愛無いだろうと思われがちだがそうではない。

 多分、こういう図面を書いた人の多くは±0.5の公差域をこんな風にイメージしてるんじゃないかと思う。

Semicylindrical_tolerance1.png
<図2> 公差域のイメージ

 だがこれは間違っている。こんな風に同心円状の公差域となるには円弧の中心が予め定まっている必要がある。だがこの図の中でそれを決める要素は何処にもない。だから実際の円弧の中心は測定面の曲率から算出する事になるので、公差の上限の円弧と下限の円弧も同心円とはならない。

 結局基準に出来そうなのは精々円弧の頂点くらいだろうから、そこを基準に置いて上限と下限の円弧を重ねてみるとこんな図が書ける。

Semicylindrical_tolerance2.png
<図3> 公差域の実際

 多分これが実態に近い公差域を表していると思う。<図2>と比べると随分と許容範囲が狭い。厳密に言うとこれもちょっと違うような気もするけど、あまり細かい事気にしてると禿げますよ。

 実はこの図、±0.5とは異なる寸法で誇張して書いたので(そうしないと領域が狭すぎて見えないから)実際にはもっともっと狭い。どれくらい狭いかというと、この場合最大で0.03くらい。OMG。上の図は幅0.5くらいで描いてあるのでその1/10にも満たない。

 ±0.5と±0.015じゃまるで違う。それでもまだ加工できそうな範囲だから良い。先日来た図面など、幅50でR500±0.05とかだった。この場合は両端でも実に0.0001(0.1μm)くらいしか許容差が無い。こんなのは流石に無理。この精度では多分真っ直ぐに削る事すら出来ない。それにその精度に見合った測定器も持っていない。

 まだまだある。今までで一番酷かったのはたしか長さ400でR70万くらいの±0.01。同様に計算すると約0.8pm(ピコメートル)。ここまで来ると清々しくすら思えてくる。

 .....

 ところで本当にそんな曲率精度が要るんでしょうか?

 それを確認してみると、実際に欲しいのはこんなに厳しい精度の物じゃなくて<図2>の様な精度の物である事が多い。まぁそうだろう。となると図面の書き方に問題があるって話じゃないのか。

 ではどういう風に表記すれば意図した事を端的に表せられるのか。それはまぁ設計意図によるので一概には言えないけど、例えば下記のように輪郭度を使用すると良いんじゃないだろうか。

Semicylindrical_dwg2.png
<図4> 輪郭度を用いた表記

 データムを何処に設定するとか、どれを「理論的に正確な寸法」(基準寸法)とするのかなどは、それこそ設計者の方で考えてもらいたいけど。

 こういう書き方も1つ困った事がある。JISでは幾何公差に片側公差(0/-0.1など)を指定する事が出来ないから、その様な物に適用する場合には基準寸法に公差を加味した中央値を指定しなければならなくなる。例えば R100 -1/-2 とか書くと、1〜2mmくらいの隙間を設けたいんだなと言う事が自然と伝わると思うが、これを輪郭度を使って書く場合、[ R98.5 ]の輪郭度1 となる。これで果たして意図は伝わるだろうか。それにこのR98.5という寸法はどこから来たのかよく分からなくならないか。相手部品を見てもそんな寸法何処にも無い!?

 上の方で円弧の中心が定まってないから云々と書いたが、だったら円の中心を定めてやれば良い?

Semicylindrical_dwg3.png
<図5> 理論的に正しい中心からの距離?

 ※ 手抜きなので横方向の位置が不確定だったりするけどそこには触れないで

 自分で書いておきながら言うのも何だけど、正直どうなんだろう?今までこういうふうに書いた図面は見たことが無いし、そもそもこんな書き方が許されるのかよく分からない。それにもっと大事な事は、こんなので正しく意図が伝わるかどうか。

 それだけでなく、この書き方だと測定方法にも配慮が要るように思う。という点でやっぱり止めておいたほうが良さそうな気がする。ただしこれがOKなら片公差の問題は生じない。

 こうして見ていくと読む人にちゃんと意図が伝わるように図面を書くというのはなかなか容易でない。

 ちなみにASMEだと幾何公差に片側公差を入れる事も出来るんだとか。細かい事は知らないけど、何となくそういうのも必要なんだろうなぁと思う。

 で、冒頭にも書いたようにこういう図面がくる度にこんな様な事の説明をして、大抵は輪郭度で管理するとかの話で纏まる事が多いのだけど、でも決して図面は書き直してくれない。その時はまぁ仕方がないにしても、次に類似品が来た時でも相変わらずなのは正直言ってどうなの?

 図面がそのままだから、検査データの方も一見すると公差外れてるじゃんみたいな事にもなる。実測半径値の横には輪郭度は××でしたと追記するんだけど、それだって経緯を知らない人から見たら何だこれ?だろう。別に話はついてるのだからそれで問題は無いのだけど何だか釈然としない。

追記 2012.09.19

 <図5>がちょっと縦長過ぎてダサかったので差し替えました。

 この書き方は止めておいたほうが良いかもと書いたけど、でもある意味理に適っている所もあるような気がする。まぁ、世の中微妙な(奇妙な)図面っていっぱいあるし...

タグ:図面 測定

posted by antec at 20:11 | Comment(10) | TrackBack(0) | 検査・測定 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月20日

測定の不確かさ

 大げさなタイトルですが内容は一般的に言う「測定の不確かさ」とはちょっと違います。まぁ気にしない。

 うちの会社は所謂加工屋さんです。図面を貰って工作機械で削って作ります。作った物にも誤差はあるので、検査して図面の要求を満たしているか確認しなきゃいけないわけですけど、ただ寸法を測るだけでも結構難しいですね。

 特に3次元測定器(以下CMMと呼びます)。ある意味では万能測定器みたいな存在ですが、これがなかなか厄介です。僕らが測りたいのは出来たものの寸法や形状なわけです。穴径はいくつだ、ピッチはどうだ、直角度や平行度といった幾何公差もチェックしなければなりません。そんなのCMMなら当たり前に測れるだろ!と思いがちですが、色々考えてるうちに、自分が今何を測ってるのか訳が分からなくなって来るんです。

 で、ふと気付きました。CMM(Coordinate Measuring Machine)。直訳すれば「座標測定器」です。そう、CMMで測ってるのは「座標」であって寸法じゃないんですよね。ここに今まで感じていた疑問や違和感に対する答えがあったのだと確信しました。

 CMMでの測定原理を考えてみても、扱っているのは「座標」なんですよね。それもスタイラスの先端についた球の中心座標です。操作してる人から見るとワークに触れた所の点を測っているように思えますが、そうでは無いんですよね。ルビーの球面上のどこが接触したかなんて多分CMMは分かってません。分かりようが無いのだと思います。
 だからとりあえず球の中心を検出し(これも直接座標が拾えるわけじゃないので、様々な理屈に基づいて算出しているだけですが)、その球の中心から球の半径分離れた所のどこかがワークに触れた所だろうという予測によって測定しているに過ぎません。

 また実際に面や穴などを測定する時も、CMMは得られた点群データから決まったアルゴリズムに沿って理想的な幾何形状の平面や円を計算しているに過ぎません。現物にはいくらかの誤差がありますが、CMMの座標計算にはその誤差が邪魔になります。ですから誤差を含んだ点群データから図形を計算するとき、最小二乗法などの計算を行って平均をとったデータム形状を求め、誤差は平面度や真円度といったその図形の付加情報のように取り扱わざるを得ません。

 こういうCMM側の都合があるので、測定しているときに変だな?と感じるんだと思います。極端な話、CMMでは曲がった棒の直径だとか反った板の厚みだとかを正しく測定することが苦手な様です。

 ぶっちゃけて言えばCMMが測っている物は虚像と言って良いのかも知れません。マイクロメータなどの接触式測定器とCMMとの関係は、CCDと光学系との関係に近い物があるように思います。
タグ:品質 測定

posted by antec at 19:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 検査・測定 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする