2011年05月17日

ちょっと期待外れ

Beyond_Blast1.jpg
 結構前に取り上げたKennametalのBeyond BLAST™。JIMTOF 2010ではフライス工具の方しか見れなかったので旋削工具がどのような方式になってるのか興味があったんだけど、気が付いたらカタログ出てた。

 ここにあるA-10-02469_Innovations 2012 (metric)(PDF 35MB)のTurningページ(PDF 12MB)から拝借すると本体はこんな感じ。
Beyond_Blast_Body.png

 どうやら専用インサートを使う方式の様だ。残念。
Beyond_Blast_Insert_CN.png

 まぁKennametalだからチップ自身はそう悪くは無いんだろうけど。ん〜でもやっぱISOチップが使えないのは痛いよなぁ。つかチップ材種がまだS種用しか無いっていうのもなぁ。やっぱサンドビックかなぁ。とか思う次第。

 何となく低圧の時はこっちの方が有効そうな気がするけど実際はどうなのかなぁ。誰かサンドビックとセコとケナメタルの三つ巴対決とかやってくんないかなぁ。

 え?イスカル?


 う〜んと、あれかっこ悪いから要らない。

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2011年02月23日

内径用ジェットストリーム

 以前にも取り上げましたが高圧クーラントを切屑処理に活用しようという目的で自作ホルダなど作っておりますが、ボーリングバー(φ12〜20)についても何とかしたいなぁと思っております。手持ちのボーリングバーはほとんどが油穴付きの物を使っていますが、これがまたからっきし役立たずなんですよね。まぁクーラントは確かに外掛けよりはいい感じに掛かってる気がするのでからっきしと言うのは少し言い過ぎですが、それで切屑処理が劇的に改善されるわけじゃ無いのが難点です。

 その主たる原因はやはり高圧クーラントの力を活かしきれていないのだろうと推測します。今度また機会があったらここに載せようと思いますけど、外径用の自作ホルダでは大体3MPaくらいから切屑の形状に明らかな違いが出てきます。これと同じように、切屑目がけてピンポイントにクーラントを当てる事が出来れば内径加工時の切屑処理もかなり改善されると思うんですよ。

 市販の物を探してみてもSECOにしろSandvikにしろ、内径バイトでもネガチップを使う大径ホルダにしか無いっぽいです。そしてやっぱりCAPT仕様だったり。

 これはもう作る他無いって事ですね。

 そんな訳でとりあえず手持ちのバイトで一番よく使うCCxx09T3用で大まかに絵描いてみたものの、肝心の切屑逃し溝をどんな風にしようかが一番の悩みどころな訳でして。
SCLCR.png

 まぁその、タンガロイと京セラを混ぜたような形になりましたが一応これには訳があって、強度計算しながら剛性に影響無さそうな所を削っていったらこんな具合になっちゃったんです。このあたりはタンガロイのストリームジェットバーのカタログにあるFEM画像とほぼ同じ傾向。売る訳じゃ無いから良いよね?

 面白半分で御影石のテクスチャ貼ってレンダリングしてみたものの、座面の逃し部分にヒビが入ってるみたいに見えるてちょっと残念な感じ。で、実際に使ってて折れたりなんかすると泣くに泣けないのですが、考えようによっては万が一ぶつけた時などは適度に靭性があって折れなかったりすると、それはそれでツール軸側のダメージがでかいので一層の事ポッキリ逝ってくれた方が機械には優しいのかも。ならば高温強度もあるSKHで作るべきか。実際にそんな事してるメーカーも有るには有るし。なんて事を考えながらも流石にSKHは高いのでSKD辺りで行こうかなぁ。靭性と高温強度(といってもそこまで温度上がらない筈ですが)考えるとSKD61ですが、今回は取り敢えずSKD11系でHRC58〜60くらいにしてみよう。
 あと表面処理はカニフロン?でも近所のメッキ屋さんだと密着性に難有りでちょっと考えもの。まぁこっちは追々で。

 正直言って私、自分で使う工具作ってる時が一番楽しいです。はい。

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2010年11月28日

高圧クーラント

 高圧クーラントは工具寿命や切屑処理において様々な効果があると言われています。私が使っている複合旋盤も7MPaのセンタースルーを備えているのでよくお世話になっています。特に小径ドリルの深穴加工ではこれが無いと能率がもの凄く低下してしまうので必需品ですが、他にも旋削の仕上げ加工におて大変に重宝しています。

 高圧ジェットのクーラントシステムと言えばあれですね、SandvikのコロターンHP。そう、これ使ってみたかったんですよ。でも残念な事にうちの機械はCAPTじゃないので付きません。他にはと言うとSeco ToolsのJetStream Tooling等もありますが、これも純正ホルダを改造しないと接続できません。

 そんな訳でして、自分で作りました。名づけてジェットクランプホルダ。ダブルクランプ+高圧ジェットノズルという方式です。見た目ゴツいのが少々恥ずかしいですが、ホルダも極力短くして剛性を高め、インサートのクランプ強度も従来の(ツーアクション式の)ダブルクランプと同等、それでいて新型ダブルクランプの様にワンアクションでインサート交換が出来、再現性も高いという優れモノです。
 ホルダの全長は75mmですが45度に傾けて使用する事で最大加工径は無制限(干渉無し)になっています。また勝手の無い両面使いですからノーズRの半分以下の切込み量の場合メインスピンドル側とサブスピンドル側で違う勝手のコーナーを使うとあたかもコーナー数が倍増したかのような効果が得られます。複合旋盤ならではの使い方じゃないかと思っていますが如何でしょうか。
KM40XTS-DCLNN12.jpg

 切れ刃の直ぐ近傍から高圧噴射されるクーラントの威力はなかなかのもので、ブレーカの効かない微小切込み領域でもプチプチと切屑を切断してくれます。これがなかなかに調子良い。

 勿論微小切込み領域で切屑処理性を高めたブレーカも各社から発売されていますが、どうしてもこういったブレーカは切削抵抗が大きくなりますから(無理矢理に切屑をカールさせるため致し方無い事ですが)私はあまり好きではありません。G級の研ぎ付けブレーカのように切れ味重視の流れるような切屑を出すタイプの方が切削抵抗が少なく、やべ、ちょっと太かった。あと0.005といった微小切込みでもちゃんと追い込めるので大好きです。所がこの手のブレーカの場合、切屑を分断するという考えは無く、決まった方向にスムーズに流すように設計されていますが、外掛けのクーラントがその切屑の流れを逆に阻害する事もあって厄介です。

 元々KMのバイトホルダには高圧センタースルーのノズルが付いていましたが、これが勢いの割に役立たずなんです。最初のうちはそんなモノだと思っていましたが、コロターンHPを見たとき、これはノズルが悪いんだという事に気付きました。遠くから拡散して噴射していては折角の高圧クーラントもその力の大半を撒き散らしているだけで、切屑やスクイ面にあまり効果的に機能して居なかったようです。勿体無いですね。

 自作したジェットクランプホルダのノズルは切れ刃の極近傍から噴射するので、切屑に対してクーラントの持つ力を最大限に利用できます。これによって今までどうにも処理出来なかったヒョロヒョロの切屑や、粘いニッケル基合金やアルミの切屑もかなり上手く処理できるようになりました。切屑がクーラントの力で処理できるとブレーカに頼らずに済むので、ゆったりとした低抵抗なインサートでもトラブル無く加工できる点は他には無い利点ではないでしょうか。

 勿論最初から上手く行ったわけではありません。ノズルの狙う位置や穴径、クランプ駒のデザインなど最初に作ったモノは完全に失敗作でした。それでも何とか完成度が高まってくると改めて高圧クーラントの威力を思い知らされました。と同時に高圧クーラントを活かす事の難しさも痛感した次第です。

 そんな訳でして、もし高圧クーラントを利用出来る環境にあれば是非ともおススメしたい訳です。勿論自分で作るとなると結構手間ですから、市販のモノの中で利用できる物があればそれに越したことはありません。といっても性能の方は私自身で確認していませんから、実際の所どうなのかは保証の限りではありませんが、私のような素人が見よう見真似で作った物よりは確実なのではないでしょうか。



 尚、Dorian Toolだけは日本国内では購入ルートが無いと思います。また国内メーカーで同様の物が無いっぽいんですが、どこかで作ってくれないんでしょうか?HSK-Tのツーリングだと競合メーカーが居なくて良いんじゃないでしょうか。HSK-T自体売れてるのか知りませんが。
 あとKennametalのBeyond Blastは今年のIMTSとJIMTOFで発表されたばかりの製品で、まだちゃんとしたカタログが公開されていません。製品が発売されているのかすら不明なので工具屋さんを通じて問い合せて頂いていますが未だ返事無しの状態です。

追記

 ちょっとコンセプトが違うので同列に並べるのも問題がありそうですが、近傍からのクーラント噴射という点でフジBCさんの製品もありかな?と思ったので載せてみました。まぁあちらは高圧クーラントを考えているわけではなく、MQLによるセミドライ加工をより効果的に働かせる為の物なので、高圧クーラントを繋いだ所で同様(切屑処理性)の効果が出るかどうかは定かではありませんが。

追記 2013.02

 リンク切れを修正しました。あとこっちの記事で取り上げたFETTEのPOINT-BLANKも折角なので表に入れておきました。

 それにしても国内メーカーからはこういったコンセプトのツーリングが一向に出てこないですね。上に載せた海外メーカーでさえまだ充実しているとは言いがたい状況の様ですが。近所の加工屋さんが新しく入れる複合旋盤のツーリングで、折角だから高圧クーラント対応の物にしようと思ったが、いざ実際に探してみると思うようなサイズの物が無いとボヤいていました。

posted by antec at 18:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 旋盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月07日

理論面粗度

 理論面粗度について。切削加工では切れ刃の形状を被削材に転写するので、ボールエンドミルではスキャロップと呼ばれる波形の加工面が形成されます。この時の波の高さをスキャロップハイト(カプスハイト)と呼びます。この高さは理論的には工具のRとピックフィード(ツールパスのピッチ)によって計算出来ますので、これを理論面粗度(理論スキャロップハイト、理論カプスハイト)として要求面粗度を満たすピックフィードを決める際に一つの目安とされています。

 因みにスキャロップ(Scallop)とはホタテガイの事です。ホタテガイの貝殻のようにデコボコした波形から来てるのでしょうか。余談ですがMastercamがV9からXへと大幅刷新されたとき、日本語のヘルプファイルも一から作り直したわけですが、機械翻訳を使ったからでしょうか、「スキャロップ加工」が「ホタテ貝加工」に翻訳されてた事もありました。まぁ背景を考えれば無理も無いかなと同情せざるを得ない状況ではあったわけですが、思わず吹き出しました。
Roughness1.png


 理論面粗度は文字通り理論値であって、実際にいくつで仕上がるかは別問題です。というか理論値よりも良くなる事は殆どありません。それは切れ刃の面粗度、加工中の振動なども転写される事と、摩耗や溶着などによって毟れやバリを生ずるからです。特にボールエンドミルで平坦な面を加工すると周速ゼロのチゼル部を使う事になり、ここは切屑の生成も複雑ですし、そのチゼルがワーク表面を掻き毟る形になるので理論値よりはかなり面粗度は悪くなります。そんなわけでもし理論値よりも良い結果が得られた場合、それは理論値の方がおかしいと疑うべきですね。

 さて、理論面粗度は一般的に次式で計算出来ると言われています。
Ry ≒ F^2/8R [mm] --- (1)

 Ry : 理論面粗度 [mm]
 F : ピックフィード [mm]
 R : 工具半径 [mm]

 これは近似式でして、ピックフィードが工具のRよりも十分小さければ精度良く近似します。正確には
Ry = R - SQRT(R^2-F^2/4) --- (2)
になります。理論式から近似式への導き方は
三平方の定理より

  (R-Ry)^2+(F/2)^2=R^2 ---- (3)

これを解いていくと

  R^2-2*R*Ry+Ry^2 + F^2/4 = R^2
    -2*R*Ry+Ry^2 + f^2/4 = 0
     Ry(Ry-2*R) + f^2/4 = 0 --- (4)

ここで R≫Ry なので Ry-2R ≒ -2R とすると

  Ry*(-2*R) + F^2/4 ≒ 0
        2*R*Ry ≒ F^2/4
          Ry ≒ F^2/(4*2*R)
          Ry ≒ F^2/(8*R)

として(1)式を得る事が出来ます。この中でR≫Ry なので Ry-2R ≒ -2R とするとあるように、この近似式は工具Rに比較してRyが十分に小さい時、言い換えればピックフィードが小さい時において近似します。

 さて、この式を旋盤加工にも当てはめるケースがよくあります(工具のカタログや専門書などにも掲載されています)が、旋盤加工では前切れ刃角の存在を忘れてはいけません。
PCLNL2020K4.png

Roughness2.png

 NC旋盤では使い勝手の良さからCNxxやWNxxといった前切れ刃角と横切れ刃角が共に5°の工具がよく使われます。この5°という浅い切れ刃角によって縦送りでも横送りでも被削材に食い込まないで使える訳ですが、図の様にカプスの山を刎ねる作用もありますので、少し送りを上げただけで(1)式や(2)式の理論値とは随分誤差が大きくなってきます。特にワイパーインサートの場合ではワイパー幅以内での送り速度であれば、ノーズRは関係無しに理論面粗度は略ゼロになります。この事も旋盤加工での理論面粗度が(1)式だけでは求められない事を単的に示しています。
 とは言っても、この前切れ刃角(と被削材の成す角、空かし角)をも考慮して理論面粗度を計算すると式が難解となってあまり実用性があるとは思えません。またカプスハイトを創生するのがノーズRの部分なのか、直線状の切れ刃部分が当たるのかの判別も必要となってきます。現実問題としてはワイパーインサートを除けば実用的な送り速度であれば有名な方の理論式でだいたい合うのでそう問題なかったりもします。

 ですが時々間違った理論式によって求めた値と比較して理論値よりも良かったとしている文献を見かけますが、それはおかしいでしょう。稀なケースとしては摩耗によってノーズRの一部が平坦となり、かつあまり毟れを生じない被削材の場合にその平坦となった切れ刃形状かほぼそのまま転写される事で理論値よりも良くなる事がありますが、その場合でも工具形状が変わっている事を考慮していないからそうなるのであって、切れ刃形状を厳密に扱えば理論値よりも良くなる事は無いはずです。

 という訳で前切れ刃とワークとのなす「空かし角」から理論面粗度を求める式を考えてみようかと思います。
Roughness_Graph1.png

 上図の左側の円の下死点を原点にとって前切れ刃角が構成する直線(以後 "切れ刃直線"と呼ぶ)を y=Ax+C の式で表した時、Cは切れ刃直線とY軸との交点ですから、三角関数の定義にある様に
C = R - secθ = R - R/cosθ --- (5)
で求める事が出来ます。また傾きAはtanθですね。
 この切れ刃直線と右側の円弧との交点の1つが理論面粗度 Ry となります。
 交点を求める為にまず右の円弧の中心から切れ刃直線に垂直な線を考えます。その垂線の長さを L、また垂線の単位ベクトルを(vx,vy)とすると、垂線と切れ刃直線との交点 P(x,y)は
Px = F + L*vx
Py = R + L*vy

 となります。この点は切れ刃直線 y=Ax+C 上にある訳ですからこの式に代入して L について解いてみると

  R + L*vy = A*(F + L*vx) + C
  R + L*vy = A*F + A*L*vx + C
  L*vy - A*L*vx = A*F + C - R
  L(vy - A*vx) = A*F + C - R
  L = (A*F + C - R)/(vy - A*vx)

これに A = tanθ、C = R-R/cosθ、vx=sinθ、vy=-cosθ を代入して

  L = (tanθ*F+(R-R/cosθ)-R) / (-cosθ-sinθ*tanθ)
  L = -(tanθ*F-R/cosθ) / (cosθ+sinθ*tanθ)

ここで tanθ=sinθ/cosθ より

  L = -{F*(sinθ/cosθ)-R/cosθ} / {cosθ+sinθ*sinθ/cosθ }
  L = -{ (F*sinθ-R)/cosθ} / { (cos^2θ+sin^2θ)/cosθ }

また三平方の定理より sin^2θ + cos^2θ = 1 となるので

  L = -{ (F*sinθ-R)/cosθ} / { 1/cosθ }
  L = -(F*sinθ-R)
  L = R-F*sinθ --- (6)

 と、ようやくシンプルな式を導く事が出来ました。

 ここで右円弧中心からRyまでの線と垂線Lとの成す角λは
λ = cos-1(L/R) --- (7)
 このλが分かると右の円弧中心からRyまでの高さが三角関数によって求まるので、残ったRyの高さは
Ry = R - R*cos(λ-θ)
  = R - R*cos{cos-1(L/R)-θ}
  = R - R*cos{cos-1(1-F/R*sinθ)-θ} --- (8)

という式によって前切れ刃角を考慮した理論面粗度を求める事ができるとわかりました。かなり面倒な式ですね。三角関数をきちんと勉強してなかった為、この式を更に簡素化出来るのかは私の頭では無理です。
 ※ここでθは前切れ刃と工作物の成す"空かし角"です。片角10°のテーパ面を前切れ刃角5°のバイトで挽く場合のθは10+5=15°となります。

 さて先にも述べましたが、実際のカプスがノーズR同士で形成されるのか、ノーズRと直線切れ刃の部分で形成されるのかの判別が必要となります。これはノーズR同士の交点位置が前切れ刃よりも上にあるか、下にあるかを見れば良いので
α = sin-1( F/2R )
としてこの時の角度αが空かし角θ以下であればノーズR同士であると分かります。

 ちなみにこの空かし角ですが、アルミ合金をダイヤモンド工具で鏡面切削する時に最も面粗度がよくなる空かし角を探った所、約0.1°の時が最も良かったとの結果をどこかで見た記憶があるのですが、今検索してみても見つかりません。どこかの加工屋さんで真空チャンバーのシール面を加工した時のデータだったと思うのですが、もう何年も前の事ですので削除されてしまったのでしょうか。残念です。


posted by antec at 17:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 旋盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする