2013年10月23日

負荷制御比べ

 また結構間が開いちゃいましたけどAdaptive Clearing系のツールパスを比べてみたよという話です。

 ところで毎度毎度Adaptive Clearingと呼ぶのはいい加減長ったらしくてやだなぁと思っていたので今回のタイトルはHSMWorks日本語版から頂戴しました。でも他のCAMのツールパスを見るとあんまり負荷制御してないよねぇと感じるものもチラホラあるので、コレ系のツールパスの総称とするにはちょっと違和感を感じますね。直訳して「適応除去」とか呼んだ方がまだ良いでしょうか?

 閑話休題

 借り物を除くと今までは唯一Mastercamしかこれ系のツールパスを出せる物が無かったのですが、最近になってSolidCAMのiMachiningを使える状況になり、実際に使ってみると色々と違う所があって面白かったのでもっと他のも見てみたいなというのがきっかけです。

 比較対象が2つだけだとちょっと残念なので海外の知らないおっさん(多分)に頼んでVoluMillでもツールパスを出して貰いました。他のCAMをお使いの方からも協力頂けると大変ありがたいので、何卒宜しくお願い致します。

 できることならばメーカーさん自身がこういったベンチマークを通じて自社製品の優位性をアピールして下さると嬉しいのですが、どちらかというと共食いみたいな状況になりやすいので難しいのかなと思います。

 でまぁまずはごくごく単純な2Dポケット加工で比べてみたいと思います。あんまり面白味は無いかも知れませんが、ツールパスの基本的な思想が覗えると思うので。加工形状はこんな感じ。

Draw_AdaptiveClearing-Competition.png
図1 ポケット形状

 ちなみにこれ実務でちょっとアレな感じのツールパスが出た事があったのでそれに似せた形状にしました。φ20の部分は「島」です。

 被削材はとりあえず軟鋼とし、工具はφ10の4枚刃超硬ソリッドエンドミルを使う事にします。また荒加工なので径方向・軸方向共に0.2残しとします。

 で、切削条件ですがiMachiningにはテクノロジーウィザードなる加工条件設定の支援機能があるのでそれを利用してみます。他のCAMではそれに倣った切削条件を設定して、ツールパスにどんな違いがあるのかを見てみたいと思います。

 まず準備として被削材をデータベースから選びます。標準で色んな被削材がデータベースに登録されていますが軟鋼がどれに相当するのかよく分かりません。なので適当に「Plain Carbon Steel_120BHN-69HRB」ってのを選びました。工具は一般的な4枚刃超硬ソリッドを想定して刃長22、突出し長35、ねじれ角40度にしました。まぁ突出し長とかは切削条件に反映されませんけど。ねじれ角はACPに関係してきます。

 で、テクノロジーウィザードのお任せ条件が何だかとってもぬるい感じだったので加工レベルを8まで上げてみました。これ以上はターボモードにチェックを入れる必要があるようですが、それはそれでちょっと刺激的な感じだったので一旦これにしました。

iMachining_ToolPathSetting-1.png
図2 iMachining ツールパス設定1

 その他の項目はこんな感じになっています。

iMachining_ToolPathSetting-2.png
図3 iMachining ツールパス設定2

 お任せ設定ではグレーアウトしていますが、チェックを入れる事で設定を変える事も出来ます。内容が結構マニアックなので意味がわかってくると楽しそうですね。

 でまぁ他にも幾つか設定はありますけどとりあえずデフォルトな感じにしてツールパスを出してみるとこんな感じです。

iMachining_ML8(ae1.46).png
図4 iMachining 加工レベル8(ae=0.08〜1.46)

 何だか不思議なツールパスが出来ました。左の島周辺もアレな感じですが、右側のヘリカル進入後のパスがやたらと浅切り込みなのも気になりますね。iMachiningの径方向の切込み量の設定は一律ではなく、「オフセット(最大)」「オフセット(最小)」とあるように範囲で設定します。その範囲内でどれくらいにするかはシステムが勝手に決めるようです。

 ヘリカル進入後の長方形領域の繰り広げにモーフィング動作を採用している為に無駄に浅い切込み量となる部分が生じますが、これはオフセット(最小)の設定値がその様な浅切り込みを許容している為にこんなのが出るようです。

 ちなみに切削関与角が変動する場合には送り速度の調整が必要ですが、それについては「チップコントロール」の設定に基づいて調整しているようです。この辺はきちんとしていますね。

 さて個人的にはもっと切込み量を大きく取って加工する事も多いため、その様な設定が出来るのか気になりましたが、その場合には加工条件変更のタブで「最大切削角度・最小切削角度」(所謂切削関与角)を変える事である程度まで対応可能でした。ただし最大値が80度に制限されている所はかなり不満です。

 そこで恒例の3mm切り込みにするとどうなるか。この時の切削関与角は約66.4度なので、グレーアウトしている切削角度の所にチェックを入れてこの角度を入力すれば良いのですが、システムの都合上、最大切削角度と最小切削角度を同じ値にする事が出来ないようなので仕方なく最小切削角度は61.4度としました。で、このようなツールパスが出来ました。

iMachining_ae3.0.png
図5 iMachining ae≒3.0

 まだ左側の変な動きが気になりますが一旦措くとして、他のCAMのツールパスと比べて見たいと思います。

 まずMastercamですが、工具の回転・送りはiMachiningの設定を引き継いてS6325、F2290。ヘリカル進入はR4.6のランプ角4度としました。そして径方向の切込み量となる「ステップオーバー」を3.0、「ツールパス半径」は1.0としました。ツールパス半径はアプローチ・リトラクト動作の円弧半径ですが隅の最小Rでもあるので、この値によって隅部にどれくらいの削り残りができるのかが何となく分かって良いです。iMachiningの場合には多分最大切削角度から決まってくるのだと思いますが、ちょっと分かりづらい様に思います。

Mastercam_ToolPathSetting-2.png
図6 Mastercam ツールパス設定画面
Mastercam_ae3.0.png
図7 Mastercam ae=3.0

 Mastercamの場合には設定したステップオーバーで直線切削した時の切削関与角をもとに、常にその角度を維持するようなツールパスが作られます。そのため基本的に送り速度の調整も必要ないのでNCデータは結構単純です。

 気になる所といったら島をぐるっと一周してきて最後に開通するときの動きでしょうか。これ実際時々問題になるのですが、計算上ちょっとでも開通すればもう其処には余肉は無いものとして動くので、実際には逃げて薄壁が残っていたりする部分でも平気で突っ込んでくれる事があって見てると結構怖いです。あとラジアスエンドミルを使う場合にも問題となりますが、今のバージョンではその辺改善されているでしょうか?

 ちょっと上の画像では分かり難いかも知れませんが、iMachiningのツールパスもその辺は似たような感じです。

 さて次にVoluMillですが、人に頼んだものなので個々の設定はよくわかりません。基本的にはMastercam同様、そんなに項目は無いようです。

Volumill_ae3.0.png
図8 VoluMill ae=3.0

 ヘリカル進入後の動作がかなり独特ですね〜。GibbsやHyperMAXXでも同様なのでしょうか?

 見た感じではオフセット型のツールパスを基にしているような感じがしますがどうなのでしょう?

 開通時の動きは先の2つよりも安全寄りになっていますね。

 あとNCデータを見るとヘリカル進入の時などやたらと送りが遅い所があるのも気になります。何故なんでしょうね?

iMachiningの左側の変な動き

 先ほどちょっと飛ばしましたiMachiningの島周辺の変な動きですが、最初対処法がわからず悩んでいましたがどうやら「島モーティング」(モーフィングの誤字と思われ)とかいう設定のせいだと分かりました。形状によっては生きてくる場面もあるのでしょうけど、今回の図形にはミスマッチに感じます。そこでオフにするとこんな感じになりました。

iMachining_ae3.0_Morph-OFF.png
図9 iMachining ae≒3.0 島モーティングOFF

 Mastercamのにかなり近くなりました。

感想

 似たような謳い文句のツールパスを3つ程簡単に比べてみましたけど、結構違いがあって興味深いですね。個人的には切削関与角をキープしようとする元祖Adaptive Clearing系のツールパスが好きです。この場合送り速度の調整も必要無い筈ですし。

 iMachiningは設定項目が多くあるので使いこなせるようになると面白そうですが、その為にもまず個々の項目が何を意味するのかヘルプくらい用意して欲しいです。細かいことは気にせずテクノロジーウィザードに任せておけというスタイルなんでしょうけど、気になるんです。サポセンの人も聞かれたら説明できるようにはしておいて欲しいです。

 最後に実際のNCデータを置いておきます。画像だけだとよく分からない部分があると思いますので。因みに動きに関わる所以外は少し手を加えてあります。ポストの違いを見たいわけじゃないので。

 そういや結局本文では一度も負荷制御って呼びませんでしたね(・ω<) てへぺろ


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2013年09月26日

iMachining

 10/1にiMachiningの初期講習を受けることになった。とりあえず3時間だけ。ちょっと気になってる所があるのでその時に聞いてみようと思う。

 iMachiningも基本コンセプトはAdaptive Clearingと似てるけど、出てくるツールパスは結構違って面白い。また比較したものを載せたいと思う。
 他にもTruemillやModuleWorksやProfitMillingなど、出来るだけいろんなメーカーの類似コンセプトのツールパスを比較してみたいんだけど、そんなにデモ機借りてるわけにもいかないし...海外のCAD/CAMフォーラムにもいくつか登録してるので、そこで呼びかけてみようかな。

 HyperMAXXやGibbsのVolumillオプション持ってる方、どなたかいらっしゃいますか?
タグ:CAM

posted by antec at 06:39 | Comment(6) | TrackBack(0) | CAD/CAM | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月16日

Z軸の引き上げ動作

 またAdaptive Clearing関係の話題。

 暫く前に画像だけアップロードしたきり書いていなかった事がありました。

 この手のツールパスに共通して、エアカット動作が従来の荒取り方法に比べて多いという点がありますが、それによる加工時間のロスを低減するために、一々退避高さまで工具を逃さず、ポケットの中で高速送りで戻り動作を行わせる事が一般的です。そしてその際、エンドミルの底刃が加工面を引きずらないように、リトラクトの際に少しだけ工具を引き上げる設定があります。

Z-Micro-Lift1.png
図1 Mastercamツールパス設定

Z-Micro-Lift2.png
図2 Mastercamオンラインヘルプより

 で、これって必要なのでしょうか?

 理由はいくつかありますが、私は最近あまりこの設定は使っていません。何故だと思います?

 必要としたらどんな理由が挙げられるか、また逆に必要ない、或いは使わない方が良い理由があるとしたらそれはどんな理由があるのか、考えてみて下さい。CAM屋さんも。

タグ:CAM hsm 工具寿命

posted by antec at 10:03 | Comment(5) | TrackBack(0) | CAD/CAM | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月06日

『切削関与角』推進運動

 近年のCAMの流行は機械シミュレーションが一段落し、今度はAdaptive Clearingが席巻している感じでしょうか。

 例えばDelcam社はVortexを、DP Technology社はESPRIT 2013でProfitMillingをそれぞれ発表しています。どちらも特許出願中と言っているので、Volumillやmsgなどといった他社エンジンのOEMではなく独自開発なのでしょうか。

 これが流行るのは良い事です。理想的な荒取り方法の1つとしてとても有用なので、これ系のツールパスができるだけ多くのCAMに搭載される事を望みます。

 この手のツールパスはどうしても加工能率や工具寿命などの点ばかりが注目されがちですが、メリットは他にもあると考えます。

 荒取りや追い込み加工の際には素材認識がずーっと昔からCAMオペレータの悲願でした。このツールパスは原理的に素材形状を認識しておく必要がある為、必然的にそこもクリアされます。これは安全で無駄の少ないツールパスを作る上でも欠かせない事です。

 ところで両者の案内ページを眺めていて少し気になる点がありました。

ESPRIT_Profitmilling.png

ProfitMillingのリーフレット[PDF] P.2

Delcam_Vortex.png

Vortex and MachineDNA from Delcam (Japanese) (Youtube) 0:39〜

 もう使うの止める宣言したあの『エンゲージ角』がここにも...

 いや、Delcamのはちょっと違うか。真ん中に何か変な棒が垂れ下がってるし.....


 しかしな〜、既にJISで定義がされている名称を、意味合いの異なる物に付けるのはやっぱり良くないと思うんだ。

 だから是非ここはユーザーの方から「この『エンゲージ角』って『切削関与角』の事ですか?」って聞いてやって下さい。

 『切削関与角』という言葉が認知された方が、それって何だ?と疑問に思った方がネットで検索したり図書館で調べたりした時に、正しい資料に辿り着ける可能性が高くなりますから。

タグ:HPM CAM hsm

posted by antec at 12:07 | Comment(4) | TrackBack(0) | CAD/CAM | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月19日

波状パターン荒取り

 FreeSteelのブログを読んでたら、EdgecamのAdaptive Clearingライクなツールパス(※)について何やら書かれていた。

 ※ブラウザの言語設定を英語にしてアクセスしないとwww.edgecam.jpに飛ばされてしまう(しかもcookieまで食わされる)ので注意。飛ばされた先の日本語ページには大した事が書かれていないのが残念だ。英語ページの方にはPDFのチラシ[760KB]もあるので興味があればそちらも。

 そのデモ動画

 先行する競合他社のツールパスと比較した場合にどうなのかというのは多少気にはなるけれどまあいいや。結局は自分が使えない物じゃ仕方ないし。

 さて、これだけ多くのCAMメーカーがこの荒加工方法を積極的に採用しているのは、やはりそれだけこの荒加工方法が優れている事の表れと言えるだろうか。

 いずれにしても後から出すメーカーはそろそろネーミングが苦しくなってきた感があるな(ぼそ


 ところで、CAMが持っている荒加工テクノロジは結構沢山あるけど、実際使うのはその中の数パターンだけ。加工方法の進歩とともにその役目を終えた物がかなりある気がする。

 トロコイド加工やモーフィング加工も、そうした物の一つだ。


 そうかと思えば世の中にはそうした残念ツールパスを最近になって(1年くらい前だけど)搭載してきた周回遅れのCAMもあったりする。

 いったい彼らは何を考えて今更こんな物を載せたのだろうか。もしかして鋼削ったこと無いのかな?


posted by antec at 20:07 | Comment(7) | TrackBack(0) | CAD/CAM | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする