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2012年04月22日

肩削りの切込みと送り

 スクエアエンドミルやショルダーカッターの標準加工条件は大抵の場合、「溝加工」と「側面加工」の2つが載っているけれど、特に側面加工の場合の切込み量というのは必ずしも標準条件通りにはしない。

 然しながら切込み量を変えたら切削速度や送り速度もそれに合わせて調整する必要が出てくる。では具体的にはどの様に調整したらよいか?

 セコツールズやサンドビックの技術資料には、基本的には平均切屑厚みを揃えるように調整しろという様な事が載っている。またセコツールズのフライスカタログ末尾にはそれをざっくり纏めた対応表が載っている。

訂正 2012.04.25

 ここちょっと間違えておりまして、サンドビックの方は平均切屑厚み(hm)じゃなくて最大切屑厚み(hex)の方でした。この方が安全寄りですね。
 結局のところこういったのは1つの目安に過ぎないので、様々な観点があるという事です。因みに僕は荒加工時の送り速度は問題無い限り目一杯送るのが正解だと思っているクチ。

Engagement-table.png

セコツールズ マシニングナビゲータ
総合カタログ フライス工具2012 (22 MB) 599頁

 この表には切削速度の係数も載っているが、こちらの算出根拠は不明。サンドビックの方にも詳しくは載っていない?

算出方法

 表に纏まっているのだからそこから係数を参照すれば良いのだが、再利用を考えるときちんと算出方法が分かったほうが良い。そこで計算方法について分かる範囲で書いておく。

 まず平均切屑厚みは以下の式から計算できるとある。(*1, *2)

hm = 360 * sinκ * Ae * fz / (π * Dc * ωe )  --- @

※各記号の意味は

 hm:平均切屑厚み [mm]
 κ:切り込み角[°]
 Ae:径方向の切り込み量[mm]
 fz:一刃当たりの送り量[mm]
 Dc:カッタ径[mm]
 ωe:切削関与角[°]

 簡単に言うと切屑断面積を接触長さで割ると平均切屑厚みが求まるという感じの式。

 さてここでスクエアエンドミルやショルダーカッターによる肩削りの場合、切込み角は通常90°なので sinκ=1。また特にフルカットの時においてはエンゲージ率Ae/Dc=1、切削関与角ωe=180°。

 よってショルダーカッターのフルカット時の平均切屑厚みは

hm = 2 * fz / π --- A

 にて得られる。大雑把に言えば fz * 0.6 くらい。

 この平均切屑厚みを基に fz を求めれば良いのだから、@式を fz についての式に変形して

fz' = hm * π * Dc * ωe / (360 * ae * sinκ ) --- B

また

ωe = arccos(1 - 2 * Ae/Dc )

 てな感じでフルカット時のhmをA式から求め、それをB式に当てはめると、エンゲージ率による補正を加えた刃当り送りfz'が求まるというわけだ。

 ただし必ずしも常にこの通りに送り速度を上げられるとは限らない。が、これが上限とも限らない。切削条件の中では送り速度の調整代は比較的大きい方だから。

計算フォーム

 そんな訳で上記の計算をおこなうフォームを作ってみた。

エンゲージ率
カッタ径 Dc * [mm]
切込幅 Ae * [mm]
エンゲージ率 Ae/Dc  [ ]

刃当り送り
フルカット時の fz * [mm]
エンゲージ率 Ae/Dc * [ ]
切削関与角 ωe  [°]
平均切屑厚み hm  [mm]
補正後刃当り送り fz'  [mm]

 *印の欄を入力すると計算してくれると思う。

 このように平均切屑厚みが一定となるように刃当り送りを調整してやると、同一面積を削る際の実切削長(刃が被削材を削る距離)も同じになる(*3)。

 逆に言うと、この様に補正して刃当り送りを増加してあげないと擦ってばっかで摩耗の進行が早くなってしまう。だから送りを上げてやる必要があるわけだ。

 実切削長が変わらないなら、刃先の摩耗もさほど変わらないはず。

 が、ツールパスの経路長(工具あるいはテーブルの移動距離)は明らかに切込み量を下げた方が長くなり、その比は刃当り送りの増加では相殺出来ない(*4)。

 という事は、加工時間的にはAeを大きく取ったほうが能率が良い?

 これには軸方向の切込み量も考慮しないといけない。

 この辺の事は実際に比べてみると面白い関係が見えてくるだろう。

 工具寿命についても同様。

 どうせなら一番美味しい所で使いたいよね。

注記

*1 セコツールズ 総合カタログ フライス工具2012 601頁

*2 サンドビック テクニカルガイド フライス加工公式集

*3 と言っても現実には送りが早くなると加減速のロスが大きくなるので実切削長はその分長くなってしまうけど、それは誤差の範囲としても構わないだろう。

*4 例えばエンゲージ率10%だと経路長は10倍に伸びてしまうが、平均切屑厚みを揃えた時のfzの増加量は約2倍、それに切削速度係数の1.5倍を加えてもテーブル送り速度は3倍なので、10倍に伸びた経路長を相殺するには到底届かない。

タグ:切削理論
posted by antec at 03:12 | Comment(4) | TrackBack(0) | 加工理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これは凄い!参考になります

エンゲージの計算など、どう考えても中学校しかでていない僕には難しかったので・・

これを参考にしながら、もっと良い条件を出していけるように、色々と刃物と材料別に探って見ます〜
Posted by まとば at 2012年04月22日 11:25
>まとば様
早速有り難うございます。
OptiRoughみたいな側面加工をここの所よく使っていて必要性を感じたので少し纏めてみました。
私自身まだまだ勉強中の身ですが、何かしらお役に立てれば幸いです。
Posted by antec at 2012年04月22日 12:40
お疲れ様です。

御存じ(?)のように、勘でしてる私にはほんと、参考になります(笑

これのアンドロイドのアプリ作ってください(笑
Posted by 花園 at 2012年04月23日 04:15
>花園様
 おはようございます。
 私自身これで計算した通りにやってるわけじゃないので大丈夫ですw

 アンドロイドアプリというのは難しいですが、このHTMLから要る所だけ抜き出して保存しておけばスマホでもローカルに使えるんじゃないでしょうか。
 ただ入力値に数値しか受け付けないようにちょっとキーイベントに小細工してるのですが、その辺の処理がスマホでもちゃんと動くのかよく分かりません。
Posted by antec at 2012年04月23日 08:21
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