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2011年09月14日

内径用スルークーラントボーリングバー

 ずいぶんと更新サボっておりましたが何とか生きています。

 さて、とりあえず自作内部給油式ボーリングバーについての感想。

 結論から言うと、7MPaでは圧が足りません。丁度これに関連しそうな記事がツールエンジニア2011年9月号に掲載されていましたが、その記事の中でも(ある条件の基でですが)13MPa以上から切屑の分断効果が得られるというデータが掲載されていました。
 ただ、このクーラント圧力と切屑分断効果の関係は恐らく

切屑の強度 < クーラントの衝突力

 とういう関係にあると現れてくると思われますが、事実、ヒョロヒョロの切屑であればそこまで高圧でなくても効果が現れてきます。例えばアルミやSUS304の場合、Ap0.2以下の加工では5MPaくらいでもチップブレーカに依らない切屑分断効果が得られました。ノズルの狙い位置や穴数・穴径などもう少し改良して性能向上を狙ってみたい所ですが、その辺についてはシミュレーションでどうこう出来る術を持っていないので実験用のノズル交換式のタイプを作ってみて試行錯誤を繰り返す他無いでしょうか。最初から最適解を得ようなどと虫の良い事考えててもダメですよね。
 それに関連する事としてISO M Stainless Steel Chip Formation の様な中繰り加工時の切屑生成の様子を捉えたハイスピードカメラ映像が何処かで見られないものかと探しているんですが、どなたかご存知ありませんでしょうか?その様子が分かるとノズルやフルートの設計に色々と役立つと思うのですが。

 とりあえず荒加工はチップブレーカによって分断させるようにして、仕上げの際に切れ味重視の(切屑を分断すると云うよりも切屑流れをコントロールするタイプの)ブレーカを使用する時にセンタスルーの力を借りて切屑処理を行うと製品やバイトへの切屑の絡みつきを防ぎ、傷やATCトラブルの回避が容易にできそうです。というか今のところそういう使い方では調子よく行っています。

 次にバイト自体の剛性面は生爪整形などの強断続加工で使用しても特に問題無さそうな感じ。切屑が詰まってぐしゃぐしゃになる状態なども経験させましたが、それでも破損しなかったので懸念していた靭性不足の点でも実用上は問題無さそう。
 流石にスチールシャンクなので深堀には向かないと思いますが(そのつもりで短めに作りました)、クランプボルト的に限界突出し量であろう85mm(4D超)の突出しでも特にバイトの剛性不足は感じなかったのでとりあえずOKかな?といった所。まぁうちの複合旋盤はそれ程剛性が高くないので荒取り条件はあまり高くしませんし。

 昨今のスローアウェイ工具は大抵テフロン含浸めっき(と思われる物)が施されていますが、今回製作した物はDC53を焼き入れたままで、表面処理は特に行いませんでした。ですので切屑の擦過による摩損が懸念される訳ですが、通常のボーリングバイトに比べて大分硬めの焼入れとなっている為か、アルミの切屑程度であれば色が付くくらいで相当使っても大丈夫そうな感じ。私の使い方であれば摩損する前にぶつけて折しょる方が先でしょう(汁)。
 もし仮に何らかの処理を施すならば、DC53は8%Cr系のダイス鋼なので窒化によって相当の表面硬度(Hv1000以上)が得られます。ですので下手なめっきを行うよりもカナック処理(あるいはラジカル窒化)の方が摩耗に対して強く出来そうな気がします。この方がめっきの様に膜厚を考慮する必要も無いので寸法管理も容易。勿論売るつもりが無いので価格の事など微塵も考慮しておりません。また耐食性の点では課題が残ります。

 製作しようと思い立った理由の1つにタンガロイのストリームジェットバーではオイルホールに切屑が入り込んでしまう事があるという問題があったのですが、今回製作した物のノズル出口径はφ0.9とφ1.4というかなり小径にしたため、内部給油を使用していな場合にもそのような事は今のところ起きていません。と言うかタンガのは穴径デカ過ぎじゃないでしょうか(ぼそ)。

市販の


 さて、とりあえず売り物にするつもりは無いのでこれくらいにして、市販の高圧センタスルー用ツーリングを1つご紹介。と言っても現時点では購入ルートが限られているので日本での入手性は非常に悪いですが、ここと取引のある商社は国内にも存在するので興味を持たれた方はご自分で探してみてください。

 紹介するのはLMT FETTE ToolsPoint-Blankトレードマーク(TM)です。
LMT-FETTE_POINT-BLANK.png

 勿論私自身は使った事は疎か現物を見た事すら無いので果たしてこいつが良い物なのか、戦力足りえる物なのかは存じ上げません。そんな事はどうでも良く、様々なメーカーが高圧クーラント対応製品を出してきている事実と、先行メーカーの物と比較してデザインのシンプルさや汎用性の面で目に付いた次第です。

 勝手ながら幾つか感じた点
ISOチップが使用出来る
例えばKennametalのBeyondBlastは専用インサートを使用するが、こいつはISOなのでお気に入りのインサートが使用できる。

すっきりデザイン
SecoのJetStreamToolingやIscarのJETHP Line - ISO Turn、KennametalのBeyond Blastではノズル部分が若干邪魔。

ポジタイプがある
SandvikのコロターンHPを始めとして小径中繰り用が無い所が気になっていた。こいつには今のところ最小加工径φ16からある事や、自動盤向けの外形用ポジタイプが有る点は見逃せない。但し海外メーカー全般に言える事ですが、小径中ぐりバイトのデザインは三菱タンガロイ京セラなどなど、国内メーカーの方が進んでいる様に感じます。というかコレに見慣れているせいかFETTEのは少々前時代的な何かを感じなくもない。

剛性面で心配な所も
構造上ノズル部分が別ピースとなっていますが、その為上記小径中繰りバイトに関しては剛性が多少弱いのでは?という気がしなくもありません。ノズルを埋め込んでいる部分の掘り込み深さがどれくらいあるのかという事が関係してくるとは思いますが、自作中繰りバイトの経験上から考えると、主分力に対抗する為の「梁」が無いのでそれなりに弱くなる筈なんですよね。私としてはそれがあって一体構造にしたんですから。

結局ダブルクランプとは何だったのか
今回もネガインサートの固定はピンロック方式でした。このブログで取り上げた高圧クーラント用バイトは唯一Dorian ToolのJetStreamを除いてピンロック乃至レバーロックを採用しています。外部給油式ではほぼ全てのメーカーが新ダブルクランプを第一推奨に挙げ、ピンロックやレバーロックに代わる次世代クランプ方式としてその優位性を宣伝してたのにも関わらず。純心な一ユーザーとしては、アレは何だったのかという気がしなくもないです。


 その他細かい内容は Point-BlankのチラシNew Products Catalogue を参照下さい。

 まぁ個人的な立場であれこれいちゃもん付ける事にはあまり意味が無いのでこれくらいにしておきます。

 さて、高圧クーラントの普及には様々な障壁がありますが周辺機器の整備も重要な点です。最初にちょっとだけ触れたツールエンジニアの記事を書かれたトクピ製作所さんでも、海外と比べて国内の高圧クーラントの普及は遅れているとの談がありますが、こういった対応工具の面でもその事が伺えますね。という訳で折角なのでトクピ製作所さんの高圧クーラント装置に関する記事も2つばかリンク張っておきます。



 超高圧クーラントは特に難削材の加工において効果を上げていると聞きますが、日本のものづくりも相対的にはそういう厄介な物が増えて行かざるをえないと思われます。一方でエコの観点からは多少疑問に思う所が無くもありません。この先高圧クーラントは普及するのか、それとも不要となって行くのか、さぁどっちでしょう?

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posted by antec at 19:46 | Comment(6) | TrackBack(0) | 工具 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ポンプの出力に依りますわねぇ。
Posted by けん at 2011年09月17日 13:20
ポンプが良くても途中の経路にボトルネックが有ることもよくあるそうですし、また圧は高くても流量が出ないポンプもありますし。
使ってると煩いし、使わない時は邪魔な箱ですし、何より価格が...現状広まる要素があまり無い気はします。

中々謳い文句のような訳には行かないですが、折角あるので何とか上手く活用できないものかと思案しています。
Posted by antec at 2011年09月17日 16:04
圧が高くて流量が出ないポンプも
流量が多くて圧が低いポンプも
出力が低いですね。

どのポンプか忘れましたが
ノズルの径がΦ2の時に最高圧力が出る
って聞きました。

ポンプによってイケてるノズル径があるってことですね。一番出力を出せる径ですね。

まぁ、径っていうか面積ですけどw
Posted by けん at 2011年09月22日 01:08
何となくですが、うちの場合だとφ2くらいが調子良いような感じがします。

サンドビックのやつがノズル径何種類かあるのも設備によって最適径が違って来る事も考慮されてるんでしょうね。
Posted by antec at 2011年09月22日 08:21
antec様はじめまして。

良く貴兄ブログを興味深く拝見させていただいております。
このたびは弊社HPへのリンクありがとうございます。
お礼もかねて書き込みさせて頂きました。
いつも非常に判りやすく構成されていらっしゃるなぁと感心させてもらっております。

antec様が文中で仰せの通り、弊社のテストもあくまで限られた条件化においてですので、
あのテストについての説明の時もそれを必ず申し上げるようにしております。
超高圧に興味を持たれるのは、航空機部材等の難削加工ユーザー様が主ですが、
対象ワークの要求する内容により、超高圧が、必ずしも良いとは言い切れませんし、
機構的に補強工夫して頂かないといけない面も多い為、工作機械メーカー様、
工具メーカー様と歩幅を合わせつつかなぁとも感じております。
最近良くお聞きする内容では、各工作機械メーカー様、エンドユーザー様でも
「ヒョロヒョロの切屑」が一般材加工での自動化の大敵というご様子のようですね。
これからも、向学の為、クーラント吐出活用の術を拝見させて頂きたいと思います。
切削専門職種の方に対しての駄文失礼しました。
Posted by tokupi21 at 2011年11月26日 14:37
>tokupi21様
コメント有難うございます。
ツールエンジニア誌にて御社の記事を拝読した折、紙面の制約もある中できちんと諸条件も載せておられた事に好感を持ちました。
そういった事もありまして、ちょうど高圧クーラントの活用方法を模索していた所でしたのでブログの方でも取り上げさせて頂きましたが、個人的なブログから勝手にリンクを張ってご迷惑でなかったでしょうか。

日々漠然と感じている事を整理する感覚でブログを書いておりますが、正直言ってまだまだよく分からない事が多く、自分で読み返してみても多少おかしな点もあってお恥ずかしい限りです。

高圧クーラントのみならず多々ある道具の1つ1つがまだ十分に使いこなせていませんが、今後も色々と試行錯誤しながら記事に載せていきたいと考えております。

専門家の立場から見て何かお気づきの点等御座いましたらアドバイス頂けますと幸いです。
Posted by antec at 2011年11月28日 13:27
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